125

ラオス・シエンクワーン県とヴィエンチャン
未発の恩寵
一九七〇年代の終わり、ジャール平原。不発の子爆弾が兄の手の中で弾け、少年ソムリットは一人残された。三十年後、通訳ガイドとして国道七号線を走る車のすぐ後ろで、取り残された爆弾が爆発する。その夜、宿の戸口に、黙って立つ人影があった。
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125

ラオス・シエンクワーン県とヴィエンチャン
一九七〇年代の終わり、ジャール平原。不発の子爆弾が兄の手の中で弾け、少年ソムリットは一人残された。三十年後、通訳ガイドとして国道七号線を走る車のすぐ後ろで、取り残された爆弾が爆発する。その夜、宿の戸口に、黙って立つ人影があった。
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123

デンマーク・コペンハーゲン、ノアブロ地区の集合住宅
コペンハーゲンの古い集合住宅の五階で、夜通し字幕を訳すアストリッド。毎晩午前一時四十五分、誰もいない階段を、鍵束の音だけが上がってきて、彼女の扉の前で鍵を回す。かつてこの階段室には、毎晩互いの部屋を訪ね合っていた年老いた兄弟が住んでいた。
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122

フィジー・ヴィチレヴ島北東部の海沿いの村
二〇一六年二月、観測史上最強のサイクロンがフィジーを襲った夜、年寄りを助けに引き返した若者が、帰らなかった。壊れた村で弔いと片づけが続く数週間、浜辺に、パンノキの木陰に、カヴァの車座の端に、濡れた彼の姿を見たという村人が増えていく。
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118

ギリシャ・クレタ島南西岸、スファキア地方フランゴカステロ
クレタ島南岸の古い城塞フランゴカステロ。風のない五月の夜明けにだけ、黒い人影の列が浜を横切り、海に消えるという。一九四二年、ドイツ兵がその列に銃を向けるのを見た祖母の話を確かめるため、孫は毎年、条件のそろう朝を待ち続ける。
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108

オランダ・北ブラバント州メイエライ地方
一九八八年、北ブラバント州の村で、古い木靴工房を仕切った家を借りた若い女性。冬の夜ごと、寝台の脇に三人の男が黙って立っていた。三十年後、村の老人が口にした一言と、一九四四年秋の「地獄のハイウェイ」の記憶。
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105

ベトナム北部・中部山岳地帯(チュンドゥ)の某省
二〇二一年夏、コロナ禍の封鎖で山あいの村の学校に取り残された三人の教員。夜の共同台所から米が消え、塀の外に立つスターフルーツの木の下から、熟れた果実の匂いが流れてくる。
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104

フランス・オクシタニー地域圏ペルピニャン(旧市街フォワ通り)
フランス南部ペルピニャンの旧市街、祖母から受け継いだ古い邸宅。十四年ものあいだ夫婦の眠りを奪い続けた正体不明の金属音と、同じ通りに伝わる十七世紀の女性の斬首譚をめぐる物語。
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101

オーストラリア・クイーンズランド州ヤングバラ
クイーンズランド州北部の高冷地ヤングバラ。冬の濃霧に閉ざされた牧場で、酪農家の娘は闇の奥に揺れる灯りと、自分を呼ぶ声に導かれていく。
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100

メキシコ・バハカリフォルニア州、ラ・ルモロサ
メヒカリからティフアナへ夜間便を走らせる冷凍トラック運転手が、峠道ラ・ルモロサで三十年前に転落死した仲間たちの亡霊に襲われる。彼らが求めていたのは復讐ではなく、家族に届けられなかった一通の手紙だった。
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082

ニュージーランド・オークランド、ハウィック歴史村
歴史村の古い家に、一人で朝まで残る調査者。カメラを置き、音を記録し、起きたことを確かめられるようにしたはずだった。深夜の物音に目を覚ました彼は、階段で、自分が上の階に置いたものを見つける。
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079

アイルランド・ダブリン
小さな印刷作坊で、一人、注文の仕上げを続ける男。最後の箱を閉じるまで帰れない夜、彼は通路を横切った若者に、ごく自然に会釈をする。その短い挨拶だけが、仕事の終わったあとにも残った。
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078

ロシア・コミ共和国、ウシンスク発ハリャガ行きの冬道
極寒の冬道(ジムニク)で燃料が凍結し立ち往生したトラック運転手アレクセイは、助手席の窓を外から叩く音に気づく。氷の向こうに現れたのは、何十年も前にこの地で命を落とした者の、熱を求める指先だった。
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077

スウェーデン・町名非特定
夜勤から戻った姉は、弟から玄関を調べてほしいと頼まれる。傷のない錠、閉まる扉、誰も見ていない庭。安全を確かめるほど、弟の話との間に小さなずれが生まれていく。
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074

オランダ・ベルギー国境、カームトハウトセ・ハイデ湿原
オランダとベルギーの合同合宿で「ドロッピング」に放り出された四人の高校生は、深い霧の湿原で方位磁針が狂う場所に迷い込む。そこに現れたのは、第一次世界大戦中に高圧電流の国境柵で命を落とした、越境者たちの残留する記憶だった。
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073

韓国・江原道麟蹄郡、軍事境界線に近い山岳地帯
臨時の夜間警戒で山頂の副哨所に入ったハン・ジヌ一等兵は、暗視鏡越しに朝鮮戦争当時の軍服を纏った兵士の影を見る。通信線の切れた旧式野戦電話が鳴り出し、鉄条網に取り付く無数の亡霊たちを前に、先任兵チェ・ソンホが下した決断だけが、二人を生かした。
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072

タイ・ノンタブリー県、バンコク近郊の運河沿い
格安の部屋に転がり込んだエアコン清掃員キッティサックは、ベッドの下に貼り付けられた古い硬貨と、送風ファンに絡む長い黒髪に気づく。前の住人だった踊り子の霊が「寝床の買い取り」を求めて現れたとき、彼に残された道は場所の権利を認め、立ち去ることだけだった。
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070

カナダ・オンタリオ州エセックス郡アマーストバーグ
廃道の現況調査に入った測量技師コリンは、谷底で蹄音のない白馬と、雪上に増え続ける五人目の足跡に追われる。トラックへ逃げ込んだ彼を待っていたのは、封鎖線の上に立つ影の群れだった。
読了 28分
068

アイスランド・町名非特定
友人一家の空き部屋で暮らし始めた男は、少しずつ家の仕事を覚えていく。けれど、夜に感じた恐怖を食卓へ持ち出したとき、自分と家族とでは、同じ家にいるものの意味が違うと気づく。
読了 23分
066

フィリピン・マニラ首都圏パシグ市オルティガス・センター
アメリカ向けコールセンターの夜勤オペレーター、ロエルの隣には、誰も座らない四十二番ステーションがある。過密労働の末に急死した女性オペレーターの席だという。ある夜、保留にしたはずの回線の向こうから、乱打されるキーボードの音と、途切れ途切れの呼吸音が響き始める。
読了 35分
065

アルゼンチン共和国・サンタフェ州
アルゼンチン・サンタフェ州の農村部。新人警官が深夜の巡回中に出会った騎手は、雨に濡れず、呼び止めても振り返らず、誰も通れないはずの道へ馬を進めていった。翌朝になって分かったのは、その姿を見た者が彼一人ではなかったということだった。
読了 34分
060

韓国・江原道楊口郡、亥安盆地(パンチボウル)の軍事境界線一帯
兵役の終わりを間近に控えた兵長ミンソクは、新兵ジヌとともに楊口の最前線監視哨で深夜の歩哨に立つ。立入禁止区域の廃掩体壕に放置された断線した野戦電話が、真夜中に一人でに鳴り始め、通気管の奥から三十年前の交戦音声が響いてくる。ミンソクとジヌは、旧式の戦闘服をまとった白濁した眼の兵士と対峙し、政変の混乱の陰に埋もれた分隊全滅の記憶と向き合うことになる。
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058

オーストラリア・ニューサウスウェールズ州シドニー、マンリーのノースヘッド
看護師のヴェロニカは、夫や親族とともにシドニー・ノースヘッドの旧検疫所「Qステーション」の夜間心霊ツアーに参加する。消毒棟で足を止められる重圧、患者宿舎に響く唸り声、墓掘り人の小屋で聞いた「立ち去れ」という囁き、そして霊安室で突如襲われる制御不能な号哭——ツアーを終えた帰りのバスの中、彼女は固く二重結びにしたはずの靴紐が、両足とも綺麗にほどかれていることに気づく。
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056

ポルトガル・リスボン近郊エストリル、サン・ジョアン・ド・エストリルの断崖
リスボン大学生のディオゴは、悪友ペドロとともに、都市伝説で語られる断崖の小城「カステリーニョ」へ肝試しに忍び込む。盲目の少女が転落死したというその廃墟で、二人は瞳を削り取られた聖人のアズレージョと、盲杖の音、そして濃霧の断崖で暗い海へ誘う少女の亡霊と対峙することになる。
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054

イギリス・イングランド北西部カンブリア州ケンダル近郊
大学を中退した青年リアムは、湖水地方の高齢者介護ホーム「ヘイゼルウッド・マナー」で夜勤の介護助手として働き始める。かつて感染症隔離療養所だった北翼棟の空き部屋・十四号室では、壁から引き抜かれたはずのナースコールが鳴り続け、認知症の入居者たちは見えない子供たちの声に怯える。停電の嵐の夜、リアムはその部屋に一人閉じ込められ、百年前に隔離されたまま声を奪われた子供たちの魂と向き合うことになる。
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033

米国・太平洋岸北西部
母とともに匿名の避難所へ逃れた八歳の少年は、毎晩、ベッドの足元に立つ見知らぬ男を見るようになる。男は四か月間、一度も動かず、一言も話さなかった——最後の夜までは。
読了 29分