夜航異聞 世界の夜に語られる、現代の異聞

夜航異聞とは

世界各地に伝わる怪異と民俗を調べ、日本語の物語として読める形にした記録集です。

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NEW RECORDS / 最新記録

新着異聞

世界各地で語られた現代の異聞。土地の記憶と民俗をたどり、日本語の物語として記録する。

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最新の記録

20 / 135 STORIES

135

最新
アフリカ・オセアニア

マダガスカル北西部、港町マハジャンガの中学校

伝わるもの

―― マハジャンガの教室に戻った朝

二〇二六年四月、マダガスカルの港町マハジャンガ。中学校の朝礼で、十四歳の少女ファラが叫んで倒れ、それを合図にしたように、少女たちが次々に泣き崩れていく。人々はそれを「アンバラヴェロナ」と呼んだ。フランス語教師ミレイユは、祖母の記憶と、看護師の姉の言葉のあいだで、少女たちのそばに立つ。

マダガスカル憑依民間信仰

読了 27分

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134

アフリカ・オセアニア

モロッコ北部、タウナート地方の山あいの村

「火を使っていないのに」

―― タウナートの山村に残った冬

二〇一二年の冬の終わり、モロッコ北部タウナート地方の山村で、家の中の物がひとりでに燃えはじめた。町の診療所で働く看護師サミラは、ひとり暮らしの母に呼ばれて村へ戻る。配線を調べ、火の始末を確かめ、見張りを立てても、火はどこからか出た。

読了 24分

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133

南北アメリカ

カナダ・ヌナブト準州、イグルーリク北西のフューリー・アンド・ヘクラ海峡

船底の反響

―― クジラの来なかった夏

二〇一六年の夏、カナダ北極圏イグルーリクの狩り場から、クジラもアザラシも姿を消した。年老いたハンターのイサクが孫娘とボートのエンジンを止めると、船底を通って、海の底から聞いたことのない音が伝わってくる。

読了 21分

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132

南北アメリカ

南極・南オークニー諸島ローリー島、オルカダス基地

スコシア湾

―― 一九六一年、凍った海を渡った灯

南極でいちばん古いアルゼンチンのオルカダス基地。一九六一年の冬、越冬隊員十人全員が、凍りついたスコシア湾の上を、船のように揺れながら進む赤い光を見た。隊長はそれを日誌に書き残した。半世紀後、同じ基地で冬を越すことになった気象観測員が、最後の生き残りの老人を訪ねる。

読了 21分

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131

南北アメリカ

エクアドル・マナビ州エル・カルメン、プランテンの畑

豊穣の番人

―― 緑の海の奥で歌うものたち

都会に疲れて、エクアドル西部のプランテン畑に戻ってきたマテオ。父は今も毎夕、畑の奥に黒砂糖を置いている。あいつらがこの土地を守っているのだ、と。雨上がりの夜、兄と二人で畑の奥へ入ったマテオは、地面すれすれに揺れる光と、歌うような声に出会う。

読了 23分

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130

ヨーロッパ

ルーマニア南東部、ブザウ県の平原の村

瓦に落ちる石

―― 夫のいない四十日のあいだに

二〇二六年の夏、ルーマニア南東部の村々で、夜ごと屋根に石が落ち、壁が叩かれる騒ぎが広がった。夫を亡くして四十日もたたない老女マリアの家にも、音はやって来る。ある夜、壁を叩く音は、亡き夫のくせと同じ拍子で鳴った。

読了 20分

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129

南北アメリカ

プエルトリコ・ウトゥアド、中央山地のコーヒー農園

何かが来る

―― ウトゥアドの山に響いた警告

二〇一七年九月、ハリケーン・マリアが去ったあと、山の町ウトゥアドに一人で暮らす叔母とようやく電話がつながる。叔母は言った。知らされていたから、少しだけ用意ができていたの。その夏、山の儀式の夜に、祖先の声が告げたのだという。

読了 21分

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128

アジア

イエメン・マフラ州、台地の縦穴

バルフートの底

―― ジンの牢獄と呼ばれた穴に、人が降りた日

イエメン東部、マフラの台地に開いた巨大な縦穴。名前を口にすることさえ忌まれてきた「ジンの牢獄」に、二〇二一年九月、隣国の探検家たちが初めて底まで降りる。地上でロープの合図を待つ土地の男の耳に、穴の底から低い唸りが上がってくる。

読了 22分

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127

中国

中国・重慶、長江の支流沿いの山の町

赤の残響

―― あるいは、霧に溶けた噂について

二〇〇九年の冬、重慶の山あいの町。遠い工場で働く親たちの電話を通して、どこかの村で赤い服の男の子が亡くなったという噂が届く。十三歳、特別な誕生日——噂の「条件」に当てはまってしまった一人の少年が、いつのまにか皆から遠ざけられていく。

読了 21分

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126

中国

中国・貴州省東南部、錦屏の古い屋敷

「お母さんが呼んだから」

―― 杉の町の古い屋敷と、呼んでいない声

一九九〇年代初め、貴州省の杉の町・錦屏。木材商人の祖先が建てた古い屋敷で、長い熱から回復しかけた十歳の娘を中庭の石の腰掛けに残し、母は市場へ出かけた。その留守に、屋敷の棟が崩れ落ちる。娘は無事だった。お母さんが呼んだから、と娘は言った。

読了 22分

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125

アジア

ラオス・シエンクワーン県とヴィエンチャン

未発の恩寵

―― シエンクワーンの赤土と、戸口に立った兄

一九七〇年代の終わり、ジャール平原。不発の子爆弾が兄の手の中で弾け、少年ソムリットは一人残された。三十年後、通訳ガイドとして国道七号線を走る車のすぐ後ろで、取り残された爆弾が爆発する。その夜、宿の戸口に、黙って立つ人影があった。

読了 25分

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124

南北アメリカ

キューバ・ハバナ、コロン墓地

ラ・ミラグロサ

―― 輪を三度鳴らし、背を向けずに去る墓

二〇一五年、ハバナ。妊娠高血圧で薬も手に入らないエレナは、母に連れられてコロン墓地へ向かう。百十年前にお産で亡くなった若い母、アメリアの墓には、今日も妊婦や母親たちが列をつくり、輪で石を三度叩いて彼女を起こし、背を向けずに去っていく。

キューバ民間信仰葬送・供養ラ・ミラグロサ

読了 29分

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123

ヨーロッパ

デンマーク・コペンハーゲン、ノアブロ地区の集合住宅

午前一時四十五分の鍵束

―― ノアブロの階段室を上ってくるもの

コペンハーゲンの古い集合住宅の五階で、夜通し字幕を訳すアストリッド。毎晩午前一時四十五分、誰もいない階段を、鍵束の音だけが上がってきて、彼女の扉の前で鍵を回す。かつてこの階段室には、毎晩互いの部屋を訪ね合っていた年老いた兄弟が住んでいた。

デンマーク幽霊住居・部屋

読了 26分

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122

アフリカ・オセアニア

フィジー・ヴィチレヴ島北東部の海沿いの村

あの子はそこに立っていた

―― サイクロンが去ったあとの、カヴァの車座の端で

二〇一六年二月、観測史上最強のサイクロンがフィジーを襲った夜、年寄りを助けに引き返した若者が、帰らなかった。壊れた村で弔いと片づけが続く数週間、浜辺に、パンノキの木陰に、カヴァの車座の端に、濡れた彼の姿を見たという村人が増えていく。

フィジー幽霊葬送・供養水辺・水神サイクロン・ウィンストン

読了 21分

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121

中国

中国・江西省南部(贛南)の山村

木客

―― 卵と柴を取り替えていった山のもの

一九七〇年代初め、江西省南部の客家の山村。墟で売れ残った卵の籠を、尾根の山道の岩に置いて、ほんの一分そばを離れたあいだに、籠は消え、大人二人でも担ぎきれない柴の束が置かれていた。その道では、山歌を歌うと大木の上から笑い声が返ってくるという。

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120

南北アメリカ

チリ・サンティアゴ市内の空軍施設

頭上の幾何学

―― 救急救命士が見上げた五つの光と、三年後の報告

二〇一二年九月、サンティアゴ。患者を看取った夜明け前、救急車の給油に立ち寄った空軍施設の中庭の真上に、音のない五つの光が降りてきて、三角形を作り、円を描いて消えた。誰にも信じてもらえないまま三年がたったある日、職員食堂のテレビが、国の委員会の結論を伝えた。

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119

アジア

イラン・テヘラン北部、シェミラン地区

静止する座標

―― 屋上の少女が見上げた一九七六年九月の夜空

一九七六年九月、テヘラン北部シェミラン。屋上に寝床を出した家族の頭上に、色を変えながら動かない光が浮かんでいた。父は空港に電話をかけ、夜半には戦闘機が二度、その光へ向かって飛んだ。革命と戦争を越え、三十年後、彼女はあの夜の「裏側」を知る。

イラン未解決事件戦争の記憶テヘランUFO事件

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118

ヨーロッパ

ギリシャ・クレタ島南西岸、スファキア地方フランゴカステロ

ドロスリーテス

―― 朝露の消える海

クレタ島南岸の古い城塞フランゴカステロ。風のない五月の夜明けにだけ、黒い人影の列が浜を横切り、海に消えるという。一九四二年、ドイツ兵がその列に銃を向けるのを見た祖母の話を確かめるため、孫は毎年、条件のそろう朝を待ち続ける。

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117

アジア

モンゴル北部の冬営地

「怖がらなければ、何もできん」

―― 冬営地で揺れたゲルと、茶をすする老人

一九三〇年代の終わり、僧院が次々と閉ざされていくモンゴルの冬。羊飼いの娘オユーンの隣のゲルが、風もないのに内側から波打ち、骨や鞍がひとりでに飛び出してくる。人々がチョトゴルの仕業だと怯えるなか、ゲルの奥では一人の老人が、平然と茶をすすっていた。

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116

アジア

ネパール東部、エベレスト南麓のクンブ谷

谷を渡る声

―― シェルパのコックが語る、見えない同伴者の夜

一九八六年秋、エベレスト南麓のクンブ谷。単独行から戻った登山者は、自分を連れ帰った「もう一人」がいたと言った。その数日後の真夜中、彼は三キロ先の山中で倒れた相棒の声を聞いたと、コックのテントに飛び込んでくる。

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FOLKLORE NOTES

物語の背景を読む

民俗録

物語に現れる儀礼、妖異、死生観を、土地の歴史とともに解説します。

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