序章 日曜日の午後一時

日曜日の午後一時になると、黒いものが落ちてきた。

それが石なのか、鉄なのか、あるいは巨大な動物の腹なのか、私には分からなかった。

夢の中には空も地面もなかった。ただ、濁った灰色の空間に私の身体だけが横たわり、その遥か上方に、輪郭の定まらない黒い塊が浮かんでいる。

黒いものは、最初は胡麻粒ほどに小さい。

それが、私の呼吸に合わせて少しずつ大きくなる。

息を吸うと近づき、吐くと止まる。

もう一度吸うと、また近づく。

私は息を止めようとする。しかし、子供の肺は長く耐えられない。苦しさに負けて空気を吸い込んだ瞬間、黒い塊が視界いっぱいに広がる。

逃げなければならない。

そう思っても、腕も脚も動かない。

最後に見えるのは、黒いものの下面だった。

そこには無数の細い亀裂が走っていた。乾いた田畑のようにも、老人の掌の皺のようにも見える。

亀裂の奥には、暗い赤色が脈打っている。

それが私の胸へ落ちてくる寸前、私は必ず目を覚ました。

目覚めると、トタン屋根の下で蝉が鳴いていた。

第一章 切り分けられた家

私が一歳か二歳の頃、家族はホーチミン市三区のグエン・トゥオン・ヒエン通り付近から、ゴーヴァップ区へ移り住んだ。

父の商売がうまくいかなくなり、以前の家を手放さなければならなかったためだと、後になって母から聞いた。

ゴーヴァップの家は、もともと背後に建つ大きな住宅の敷地の一部だった。以前の所有者が土地を細長く切り分け、表通りへ抜ける小さな通路と一緒に、私たちの両親へ売ったのだという。

家には二階も中二階もなかった。

中央に一番広い部屋があり、そこを父と母と私の三人が使った。脇に小さな部屋が二つあり、一つには父の兄弟、もう一つには年上の従姉が暮らしていた。

屋根は古い波形のトタン板で、強い雨が降ると会話ができないほど大きな音を立てた。

真昼には太陽の熱を吸い込み、家全体が蒸し器のようになった。天井板も断熱材もなく、寝床に横たわると、頭上で膨張した金属がぱちん、ぱちんと鳴るのが聞こえた。

それでも幼い私にとって、そこは世界の全部だった。

表の細い路地では、朝になると氷売りの自転車が鈴を鳴らした。昼には麺を売る女性の声が響き、夕方には近所の子供たちがサンダルをゴールポスト代わりに置いて、柔らかくなったボールを蹴った。

父は家の前方で仕立ての仕事をしていた。

壁際には黒い足踏みミシンがあり、机の上には色とりどりの糸巻きが並んでいた。電話は仕事用の固定電話が一台だけで、鳴れば家にいる者が誰でも受話器を取った。

母は市場で食料品を売ったり、親戚の仕事を手伝ったりしていた。

両親が朝から晩まで働いているあいだ、私は学校へ行き、帰宅すると店先で布切れを玩具にして遊んだ。

平日は全日制の学校で昼寝の時間があった。

教室の机を端へ寄せ、床へ薄い敷物を広げ、子供たちが並んで眠る。先生が窓を閉めると、扇風機の回転音と、誰かの寝息だけが聞こえた。

学校では、黒い夢を見なかった。

夢が来るのは、自宅で眠る土曜日と日曜日だけだった。

時間もほとんど決まっていた。

午後一時から二時の間。

父が仕事の手を休め、近所の大人たちも昼食後の静けさに沈み、路地から人の声が消える頃だった。

第二章 同じ夢

最初にその夢を見た日を、私は覚えていない。

母によれば、ゴーヴァップの家へ移って間もない頃から、私は夜中に何度も泣いて目を覚ます子供だったという。

身体に異常はなかった。

熱もなく、食欲もあり、昼間は元気に遊んでいた。しかし夜になると突然泣き出し、両腕で頭を覆うような仕草をした。

母は蚊に刺されたのだと思い、蚊帳を調べた。

父は屋根を走る鼠の音に驚いているのだと言った。

近所の女性は、新しい家の土にまだ馴染んでいないのだろう、と話した。

土地が人間を覚えるまでには時間がかかる。

人間の方も、その土地の匂い、湿気、夜の音を身体へ取り込む必要がある。

その女性は、そう言って玄関先に米と塩を置くよう母に勧めた。

母は病院へも連れていった。

医師は、環境が変わったことで眠りが浅くなっているのだろう、と説明した。成長すれば治る。昼間によく遊ばせ、夜更かしをさせないように、と。

確かに夜泣きは、年齢とともに減っていった。

代わりに、小学校へ入った頃から、あの昼の夢が始まった。

最初のうち、私は夢の内容を両親に話さなかった。

子供は、自分が見た夢を他人も見ていると思うことがある。毎週末、黒いものが落ちてくるのは、日曜日の昼には誰にでも起きることなのだと、私はどこかで考えていた。

夢の順序は、毎回同じだった。

灰色の空間。

動かない身体。

上方の黒い点。

呼吸するたびに近づいてくる塊。

下面に刻まれた亀裂。

そして、押し潰される直前の覚醒。

違っているのは、夢から覚めたあとの行動だけだった。

ある日は泣きながら母を探した。

ある日は何も言わず、台所で水を飲んだ。

またある日は、夢の続きを見ないよう、夕方まで家の外で遊んだ。

中学生になる少し前、私は初めて母に夢の話をした。

母は野菜を刻む手を止めた。

「黒いものって、何なの」

「分からない。大きいもの」

「顔はある?」

「ない」

「人の形?」

「違う」

「声は聞こえる?」

私は首を振った。

母はしばらく考えたあと、眠る場所を変えてみようと言った。

その夜、私は従姉の部屋で眠った。

夜の夢は見なかった。

しかし次の日曜日の昼、中央の部屋へ戻って昼寝をすると、黒い塊は再び落ちてきた。

母は枕の向きを変えた。

それでも夢は来た。

寝床を壁際から窓際へ移した。

夢の中で私の身体は移動せず、以前と同じ場所に横たわっていた。

昼寝をやめようとしたこともある。

だが、南部の暑い午後だった。朝から友人と走り回ったあと、涼しい床へ横になれば、子供の身体は眠気に逆らえない。

目を閉じたつもりはなかった。

次に気づくと、私は灰色の空間にいた。

上には、黒い点が浮かんでいた。

第三章 土曜日と日曜日

やがて私は、この夢には規則があると考えるようになった。

平日の学校では見ない。

夜も見ない。

自宅で眠る週末の午後だけ。

そして夢を見るたび、黒い塊は前回よりわずかに低い位置から始まった。

最初の頃は、空の彼方にある点にすぎなかった。

数年後には、夢が始まった瞬間から、拳ほどの大きさに見えるようになった。

中学校へ進む頃には、それはすでに私の頭上に浮かぶ巨大な天井のようだった。

私が成長したから、夢の記憶が鮮明になっただけかもしれない。

しかし当時の私は、黒いものが毎週少しずつ降りてきているのだと信じていた。

落下しているのではない。

何年もかけて、私の寝床を目指している。

そう思うと、土曜の朝から憂鬱になった。

午前中はなるべく外にいた。友人の家へ遊びに行き、用事もないのに市場を歩き、父の配達についていった。

だが昼食を終えると、父は必ず言った。

「少し寝なさい。午後にまた遊べばいい」

夢が怖いとは言えなかった。

もう幼児ではない。黒いものに潰される夢が怖いと言えば、近所の友人に知られ、からかわれるかもしれない。

私は寝床へ横たわり、目を開けたまま天井を見た。

錆の浮いたトタン屋根。

細い木材。

壁との隙間から入る光。

屋根の上を鳥が歩くと、爪の音がした。

現実の屋根は薄く、頼りなかった。

夢の黒いものは、それより遥かに厚く、重かった。

ある日、私は夢の中で腕を動かすことに成功した。

黒い塊が近づく中、右手の指先だけが持ち上がった。

私は必死で床を掻いた。

爪の下に、湿った土が入った。

現実の寝床はタイル張りだった。

夢の中では、私の身体は土の上に寝ていた。

指を動かすたび、土の下から何か硬いものが現れた。

白く細長いもの。

小枝のようにも、指の骨のようにも見えた。

触れた瞬間、黒い塊が急に落ちてきた。

私は叫びながら目を覚ました。

枕元には母が立っていた。

「どうしたの」

「手が」

右手を見ると、爪の間に黒いものが詰まっていた。

私は息を止めた。

母は私の手を取り、匂いを嗅いだ。

それは土ではなかった。

父の仕事場から飛んできた、黒い布の細かな繊維だった。

窓から入った風が糸屑を運び、汗ばんだ手に付着したのだろう。

説明は簡単だった。

それでも、その日から私は眠る前に、必ず床を掃くようになった。

第四章 背後の家

私たちの家の背後には、土地を分けて売った以前の所有者の住宅があった。

こちらより敷地が広く、庭には果樹が植えられていた。高い塀があったため、普段は中の様子が見えなかった。

その家が建て替えられることになったのは、私が中学校へ入った年の夏だった。

朝早くから、塀の向こうで槌や電動工具の音がした。

古い壁が壊され、煉瓦が運び出され、新しい柱が立てられた。

工事の人々は、ときどき私たちのトタン屋根へ上がった。

背後の壁を塗ったり、資材を渡したりするため、こちらの屋根を足場として使わせてほしいと、所有者から頼まれたのだ。

父は承諾した。

近所同士なのだから、多少の不便は仕方がない。

ただ、屋根が古いので、乗る場所には気をつけてほしいと伝えた。

作業員たちは木の板を渡し、体重が一箇所へ集中しないようにしていた。それでも、人が歩くたびにトタン板は大きくしなり、天井から錆と埃が落ちてきた。

私は工事の音を嫌っていた。

とりわけ、壁を壊す大槌の音が嫌だった。

どん。

どん。

どん。

一定の間隔で家が震える。

その音は、夢の中の黒いものが一段ずつ近づく感覚に似ていた。

工事が始まってから、夢にも変化が現れた。

黒い塊の亀裂から、砂が落ちるようになった。

細かな粒が私の顔へ降り、瞼と唇を覆った。

呼吸をするたび、砂が鼻と口へ入った。

私は咳をしようとする。

だが夢の中では胸が動かない。

黒いものは、それまで音を立てなかった。

ところがその夏から、降下するたびに、内部から鈍い音が聞こえるようになった。

どん。

少し近づく。

どん。

亀裂が広がる。

どん。

赤い光が見える。

ある土曜日、夢から目覚めると、背後の工事現場でも同じ音が続いていた。

夢と現実の槌音が、境目なくつながっていた。

私は寝床から起きられず、しばらく屋根を見つめていた。

夢が終わっていないような気がした。

そのとき、屋根の上から声がした。

「そこにいるのか」

私は毛布を掴んだ。

男の声だった。

工事の作業員だと思い、返事をしようとした。

しかし声は、もう一度言った。

「まだ、そこにいるのか」

言葉はベトナム語だった。

声の調子がおかしかった。

質問しているのではない。

見えない何かの位置を、誰かに報告しているような口調だった。

私は部屋を出た。

表へ回って屋根を見上げたが、誰もいなかった。

工事は昼休みに入り、作業員たちは背後の家で食事をしていた。

父に話すと、隣の声が壁へ反響したのだろうと言った。

「家がくっついていると、音は変なところから聞こえるものだ」

父はそう言い、ミシンの作業へ戻った。

私はもう一度屋根を見た。

その中央、私の寝床の真上にあたる場所が、わずかにへこんでいた。

第五章 祖母の茶碗

同じ頃、父方の祖母が数日間、私たちの家へ泊まりに来た。

祖母は怪談を好まなかった。

近所の女性たちが霊や夢占いの話を始めると、「死んだ者より、生きている者の方が面倒だ」と言って笑う人だった。

私の夢についても、母が説明すると鼻を鳴らした。

「暑い屋根の下で寝かせるからだよ。頭に熱が籠もっているんだ」

祖母は私の額へ手を当てた。

「黒いものに顔はあるのかい」

「ない」

「手は」

「ない」

「お前を呼ぶかい」

「呼ばない」

祖母はうなずいた。

「なら、まだただの夢だ」

その言葉が気になった。

「呼んだら、夢じゃないの」

祖母は答えず、茶を飲んだ。

夕方になると、彼女は家の奥へ小さな台を置き、持参した茶碗に水を注いだ。その横には果物を一つと、線香を立てるための小さな器を置いた。

正式な祭壇というほどのものではない。

祖母は旅先でも、ときどき同じことをしていた。亡くなった家族へ、その日の食べ物や水を少し分けるのだと聞いたことがある。

「ここには誰を祀るの」

私が尋ねると、祖母は線香に火を点けながら言った。

「誰か一人じゃないよ。家の中で名前を呼ばれなくなった者たちだ」

「知らない人も来る?」

「知らない者には、知らない者の家がある」

「家がなくなったら?」

祖母は線香を器へ立てた。

細い煙がトタン屋根へ上がった。

「家がなくなっても、場所は残る」

私は背後の工事現場を思った。

毎日、古い壁が壊されていた。部屋が一つずつ消え、床が剥がされ、土が掘り返されていた。

以前そこに住んでいた人々の記憶は、どこへ行くのだろう。

祖母は私の視線に気づいた。

「何か見たのかい」

「夢だけ」

「それなら、夢の中で返事をしてはいけない」

「誰に」

「名前を呼ぶものに」

その夜、私は祖母と同じ部屋で眠った。

夢は見なかった。

翌朝、祭壇代わりの台を見ると、茶碗の水が半分ほど減っていた。

暑さで蒸発したのだろう。

茶碗の周囲には、細かな灰が円を描くように落ちていた。

第六章 工事のない昼

事故が起きた日は、夏休み中だった。

前日まで背後の家では、古い壁を取り壊す作業が続いていた。作業員たちは、私たちの家へ面した壁の上部を崩し、新しい壁を築く準備をしていた。

その日の朝、工事の音はしなかった。

作業員が休みだったのか、資材を待っていたのか、私には分からない。

父は仕事で外出し、母は祖母の家へ行っていた。

親戚も出かけており、家には私一人だった。

午前中、私は床に寝転んで漫画を読んだ。

昼には台所に残されていた米と魚を食べた。

外はよく晴れていた。

空気は重く、風もなかった。トタン屋根に溜まった熱が、ゆっくり室内へ降りてきた。

工事のない静けさが、かえって落ち着かなかった。

いつも聞こえる槌の音がないため、家の小さな音がすべて耳に入った。

冷蔵庫のモーター。

壁を走るヤモリ。

父の机に積まれた布が、熱でわずかに滑る音。

午後一時を過ぎた頃、私は中央の部屋へ入った。

昼寝をするつもりはなかった。

本を読みながら横になっただけだった。

窓から差し込む光が床を横切っていた。私はその線が少しずつ移動するのを見ていた。

気がつくと、灰色の空間にいた。

黒い塊は、もう空に浮かんでいなかった。

私のすぐ上にあった。

手を伸ばせば触れられる距離だった。

下面の亀裂が、これまでになく鮮明に見えた。

灰色の表面。

砂粒。

小石。

錆びた金属の切れ端。

それは一枚の影ではなかった。

無数の石と砂を固めた、厚い板だった。

コンクリート。

当時の私は、その言葉を夢の中で考えたわけではない。

ただ、それが建物の一部であることを理解した。

黒い板の向こうで、誰かが叩いていた。

どん。

どん。

どん。

工事の槌に似ていた。

だが音は上からではなく、板の内部から響いていた。

何かがコンクリートの中に閉じ込められ、こちらへ出ようとしている。

亀裂から黒い指が一本現れた。

指は乾いて細く、爪だけが妙に長かった。

それが亀裂の縁を掴んだ。

二本目の指が出た。

三本目。

やがて黒い手が、コンクリートの下面から垂れ下がった。

私は逃げようとした。

身体は土の上に固定されていた。

夢の中で初めて、声が聞こえた。

「起きなさい」

祖母の声だと思った。

だが祖母は、その日、別の家にいた。

「そこを離れなさい」

黒い塊が落ち始めた。

私は息を止めた。

以前は、息を吸わなければ塊は動かなかった。

今回は違った。

呼吸とは関係なく、重力に引かれて落ちてくる。

コンクリートの中から伸びた手が、私を掴もうとしていた。

「まだ、そこにいるのか」

屋根の上で聞いた男の声がした。

黒い塊が視界を覆った。

その瞬間、別の声が私の名を呼んだ。

幼い頃に亡くなったという、父の姉の名を続けて呼んだ。

私の名と、その人の名は、一文字も似ていなかった。

それでも私は、呼ばれたのが自分だと理解した。

「外へ」

声が言った。

「いま」

第七章 落下

私は寝床から跳ね起きた。

胸が激しく上下していた。

口の中には砂を噛んだような感触があり、舌で歯をなぞると、ざらざらしたものが付着していた。

部屋には誰もいない。

工事の音もしなかった。

私は夢の中で呼ばれた名前を覚えていた。

しかし、それが誰の名なのかは知らなかった。

頭から汗を流しながら、台所へ向かった。

水を飲もうとしたのだ。

寝床から三歩離れたところで、背後から音がした。

ぎい、と屋根が軋んだ。

私は振り返った。

トタン板が、内側へゆっくり撓んでいた。

最初は人が屋根へ乗ったのだと思った。

「誰かいるの」

返事はない。

撓みは少しずつ深くなった。

古い板の継ぎ目から、細かな埃が落ちた。

寝床の白いシーツへ、灰色の点が散った。

次に、壁の上方から低い亀裂音がした。

それは夢の中で聞いた音と同じだった。

乾いた土地が割れるような音。

何か巨大なものが、耐えられる限界まで重みを増していく音。

私は台所へ逃げようとした。

そのとき、固定電話が鳴った。

突然のベルに身体が跳ねた。

一回。

二回。

三回。

父か母かもしれない。

私は反射的に受話器へ手を伸ばした。

耳に当てる。

「もしもし」

返事はなかった。

受話器の向こうから、ざらざらという雑音だけが聞こえた。

「もしもし。誰ですか」

雑音の奥で、何かが三度鳴った。

どん。

どん。

どん。

続いて、夢の中と同じ声がした。

「外へ」

私は受話器を落とした。

裸足のまま、玄関へ走った。

敷居を越え、路地へ飛び出した瞬間、背後で世界が崩れた。

最初に聞こえたのは、雷のような衝撃音だった。

次に、金属が引き裂かれる音。

窓ガラスが割れ、木枠が折れ、父の机から糸巻きや鋏が床へ散乱した。

路地の人々が振り返った。

誰かが叫んだ。

私は玄関の外で立ち尽くしていた。

家の中央から、灰色の粉塵が噴き出していた。

屋根に大きな穴が開いていた。

背後の工事現場で、解体途中の壁の一部が突然崩れたのだ。

厚いコンクリートの塊が境界の塀を越え、私たちの古いトタン屋根へ落下した。

トタン板は重みに耐えられず、内側へ折れ曲がった。

コンクリートは屋根、細い梁、窓枠をまとめて突き破り、中央の部屋へ落ちていた。

私が数秒前まで横たわっていた場所だった。

近所の大人たちが家へ駆け込んだ。

私は腕を掴まれ、路地の反対側へ連れていかれた。

誰かが頭や肩に怪我がないか確かめた。

私は何も答えられなかった。

穴の開いた屋根を見ていた。

粉塵の中から、歪んだ寝床が見えた。

シーツの上には、人間の胴体ほどもあるコンクリートが横たわっていた。

夢で見た通り、下面には細い亀裂が走っていた。

亀裂の隙間に、錆びた鉄筋が三本露出していた。

黒い指のようだった。

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